平成15(2003)年11月27日(木)
大阪書籍の汚職事件で文科省が綱紀粛正通知
本会からの要望書にも答える初等中等教育局長通知の内容
去る10月17日、平成13年度の教科書採択において、現金を渡して不正選定を依頼した大阪書籍と現金を受け取った三重県尾鷲市の教育長が逮捕されるという醜悪極まる贈収賄事件が発覚、関係者5人が逮捕されました。
その後、11月6日に至って、名古屋地検が東利三・教育長を起訴し、大阪書籍の蒔田容疑者ら4人を略式起訴、名古屋簡易裁判所はその日のうちに、それぞれに30万円の略式命令を出しています。
すでに10月29日付「つくる会ニュース」で詳しくお伝えしましたように、本会は去る10月27日、教科書協会と文部科学省に対して「要望書」を手交し、記者会見で本会声明を発表しています。
教科書協会は10月末、今後の対応について「誠に遺憾なことであり、今後の捜査の進展と事実関係を踏まえて、大阪書籍はもちろん、各発行者の社員個々にまでゆきわたるよう厳正に指導していきたい」と返答してきました。
そこで待たれていたのが、文部科学省の対応です。去る11月21日になってようやく、初等中等教育局長名で「教科書採択の公正確保の徹底について(通知)」が、都道府県教育委員会教育長、教科書発行者、都道府県知事、国立大学長、国立久里浜養護学校長の5ヵ所に宛てて通達されました。
都道府県教育長に対しては「採択関係者に対し、法令遵守は言うまでもなく、発行者の過当な宣伝行為を誘発するような行為も厳に慎み、社会の疑惑を招くことのないよう」求め、教科書の「編著作者が教科書採択に関与することがないよう」注意を喚起しています。
また、教科書会社に対しては、「FAX通信」前号でも指摘したような「法令遵守は言うまでもなく、公正取引委員会の特殊指定や文部科学省の指導を厳守」するよう求めています。
しかし、すでに11月23日付「産経新聞」の主張でも、極めて悪質な贈収賄事件なのだから「少なくとも、この地域では、次回の採択から大阪書籍を外すべきだろう」と指摘し、本会の声明でも、文部科学省に対して「三重県尾鷲地区で採択された大阪書籍版教科書の採択変更はおこなうのかどうか、大阪書籍の教科書会社としての認可取り消しの有無等、関係者と関係地区に対する具体的な対応についての方針と根拠」を求めています。
これが前代未聞の汚職事件に対する通常の反応にもかかわらず、文科省の通知はいささか生ぬるい感じです。そこで、本会の三重県支部(松浦光修支部長)が県下の全教育委員会に対して、アンケートを発送していますので、次回ニュースでその詳細をご報告いたします。
では、ここに都道府県教育長と教科書会社に対する通知の全文および産経新聞の主張をご紹介いたします。
15文科初第827号
平成15年11月21日
各都道府県教育委員会教育長 殿
文部科学省初等中等教育局長
近藤信司
教科書採択の公正確保の徹底について(通知)
教科書の採択については、これまで、文部科学省において、採択権者の責任のもと、教科書の綿密な調査研究に基づき、適正かつ公正な採択をお願いしてきたところですが、この度、平成13年度の小・中学校用教科書採択をめぐり、採択関係者が収賄で逮捕・起訴されたことは、極めて遺憾であります。
教科書の採択は、児童生徒により良い教科書を提供する観点から、各採択権者の権限と責任のもと、教科書の内容についての十分かつ綿密な調査研究によって公正かつ適正に行われるべきものです。
各教育委員会においては、採択関係者に対し、法令遵守は言うまでもなく、発行者の過当な宣伝行為を誘発するような行為も厳に慎み、社会の疑惑を招くことのないよう、採択の公正確保について改めて指導の徹底を図るとともに、域内の市町村教育委員会に対しても周知をお願いいたします。
また、教科書の編著作者が採択に関与することについては、従来より文部科学省の指導により禁止しているところですが、各教育委員会においては、引き続き、採択手続に参加させようとする者から編著作者等でない旨の確認を得るなどの方法により、編著作者が教科書採択に関与することがないよう御留意願います。
なお、本件については、各教科書発行者あてに、採択の公正確保の徹底を求める通知を別紙写のとおり発出していること、及び、おって、この通知の写しを各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学長及び国立久里浜養護学校長あてに送付することを申し添えます。
上記文章のpdfファイル
http://www.tsukurukai.com/01_top_news/file_pdf/monka827_1.pdf
15文科初第827号
平成15年11月21日
各教科書発行者 殿
文部科学省初等中等教育局長
近藤信司
教科書の採択の公正確保の徹底について(通知)
教科書の採択については、文部科学省において、これまで再三にわたり過当な宣伝行為を厳に慎み、公正確保に努めるようお願いしてきたところですが、この度、平成13年度の小・中学校用教科書採択をめぐり、教科書発行者の社員らが贈賄罪で逮捕・起訴され刑事処分を受けたことは、極めて遺憾であります。
教科書の採択は、児童生徒により良い教科書を提供する観点から、各採択権者の権限と責任のもと、教科書の内容についての十分かつ綿密な調査研究によって公正かつ適正に行われるべきものであり、違法な行為が許されないことは当然のこと、過当な宣伝行為によって採択の公正に疑義を持たれることのないようにすることが必要であります。
各発行者においては、教科書採択の重要性を十分再認識し、このような事件が二度と起こることのないよう、法令遵守は言うまでもなく、公正取引委員会の特殊指定や文部科学省の指導を厳守し、過当な宣伝行為を厳に慎み、採択の公正確保に一層務めていただくようお願いします。
なお、本件については、各都道府県教育委員会に対し、採択の公正確保の徹底を求める通知を別紙写のとおり発出していることを申し添えます。
上記文章のpdfファイル
http://www.tsukurukai.com/01_top_news/file_pdf/monka827_2.pdf
【参考】
教科書汚職−長年の癒着体質を改めよ
(平成15年11月23日付「産経新聞」 主張)
三重県尾鷲市の教科書採択をめぐる汚職事件で、文部科学省は改めて綱紀粛正を求める通知を都道府県教委と各教科書会社に出した。以前から指摘されていた教科書業界と教育界の癒着の一端が明るみに出たといえる。
尾鷲市の事件は、平成十三年夏の小中学校教科書の採択をめぐり、尾鷲地区教科書採択協議会(尾鷲市と隣接二町で構成)の会長を務める尾鷲市教育長が、大阪書籍の担当者から現金二十万円を受け取ったという容疑だ。
教育長はその見返りに大阪書籍を推す校長三人を各教科の調査部会長に選び、その結果、中学の歴史と公民などで大阪書籍の教科書が採択された。大阪書籍は、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社教科書の登場に危機感をつのらせ、教育長に接近したとされる。
公正であるべき教科書採択が賄賂でねじ曲げられた極めて悪質な贈収賄事件である。少なくとも、この地域では、次回の採択から大阪書籍を外すべきだろう。
刑事事件には至らないものの、教科書会社と教育界の癒着を示す事例はかなりある。先月、東京都教育委員会の指導主事ら教科書選定に関与する三人が教科書会社の社員らと温泉旅行をしていた事実が明るみに出た。別の指導主事は小学校の理科の教科書を執筆し、百万円の報酬を得ていた。指導主事の教科書執筆は禁じられている。
こうした灰色のケースは全国的にある可能性が強い。都教委は都内の全指導主事を対象に教科書会社との接触に関する調査を始める一方、業者との癒着を防止するための新しいガイドラインの策定に着手した。他の自治体にも適切な自浄努力を求めたい。
教科書汚職として、古くは、知事や師範学校長ら百人以上が有罪判決を受けた明治三十五(一九〇二)年の教科書疑獄が知られる。戦後は、昭和三十六年に大阪の教員らが教科書会社から現金などを受け取っていた事件以外、表面化したケースは少ない。だが、長年の関係からくる癒着体質には根深いものがあり、今回の尾鷲市の事件も氷山の一角と見るべきだろう。
教科書採択の権限をもつ各自治体の教育長をはじめ、教育委員には、一層の自覚が求められる。
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つくる会ニュース >
大阪書籍の尾鷲汚職事件を受けて本会が記者会見