平成18(2006)年5月11日(木)
3月29日付け産経新聞報道記事の問題点
  FAX通信第173号(5月2日)で、3月28日の理事会の内容を伝えた3月29日付け産経新聞の記事が「不正確」「歪曲」などとされていることについて、会員からどういうことなのか説明して欲しいとの問い合わせをいただいております。以下に、理事会終了後、会を代表して種子島会長と事務局の鈴木氏が産経新聞記者に電話で伝えた内容と、実際に新聞に掲載された記事とを対比し、問題点を解説します。
■つくる会側の発表

  3月28日の理事会は、午後8時40分に終了した。その後、理事間の和解の意味も含めて事務局で急遽会場を用意し、懇親の場が設定された。その席で、午後9時過ぎに、種子島会長と事務局の鈴木氏が産経新聞教科書問題取材班の記者に携帯で電話した。まず、鈴木氏が、八木氏が副会長に任命されたことを告げたあと、会の新しい方針として、FAX通信第170号(3月29日)にも掲載された次の項目を読み上げる形で伝えた。

 
(1) 法務、財務、人事、教科書制度・採択制度研究について担当理事を任命し、それぞれのプロジェクトとして早急に取り組む。さらにブロック担当理事を任命し、支部の採択活動の支援に当たる。
(2) 会長、副会長に担当理事を加えた執行部会を隔週開催し総会に向けた方針の
具体化に取り組む。
(3) 執行部会で検討された内容は4月、5月、6月の理事会で逐次決定し、総会に向けた方針とする。
(4) 次期総会は、7月2日(日)に東京で開催する。
(5) 総会に向けた人事案件などについては6月の理事会で決定し、総会に提案する以前に評議会に諮ることとする。なお、評議会は欠員補充等の人事を早急にはかり、体制を強化する。
(6) 前記方針を実現するために、種子島会長を中心に理事会が一丸となって取り組む。
(7) 前期方針の決定をみたので、藤岡、福地両理事に緊急に要請した会長補佐の任を本日をもって解く。両理事のご尽力に感謝する。
 
  次に、種子島会長が携帯電話を取り、「つくる会は、『創業者の時代』から『組織の時代』の第2ステージに変わらなければならない。そういう立場で新しい方針を決めた」という趣旨のコメントをした。
■3月29日付け産経新聞の報道記事 ※下線を施した部分が、問題の箇所。

【見出し】 八木氏会長復帰へ/「つくる会」内紛収束
【本文】
 
  新しい歴史教科書をつくる会は28日の理事会で、会長を解任されていた八木秀次理事を副会長に選任した。7月の総会までに会長に復帰すると見られる。同会の内紛は事実上の原状回復で収束に向かうことになった。
 
  つくる会は先月27日、無許可で中国を訪問したことなどを理由に会長だった八木氏と事務局長だった宮崎正治氏を解任。種子島経氏を会長に選任していた。副会長だった藤岡信勝氏も執行部の責任を取って解任されたが、2日後に「会長補佐」に就任していた。
 
  しかし、地方支部や支援団体から疑問の声が相次いだことなどから再考を決めた。藤岡氏は会長補佐の職を解かれた。種子島会長は組織の再編などを進めた後、7月に予定されている総会までに八木氏に引き継ぐと見られる。 宮崎氏の事務局復帰も検討されている。
 
  理事会では西尾幹二元会長の影響力を排除することも確認された。種子島会長は「会員の意見を聴いたところ、八木待望論が圧倒的だ。内紛はピンチだったが、『創業者の時代』から第2ステージに飛躍するチャンスにしたい」と話している。
■産経報道記事の問題点
 
  上記報道記事は、会長と事務局の正式発表の内容と会の立場を無視した問題だらけの内容である。以下、5つの論点にしぼって指摘する。
 
(1)「八木氏会長復帰へ」(見出し)、「7月の総会までに会長に復帰すると見られる

  理事会では八木氏の副会長任命を決定しただけで、それ以外の決定は行っていない。
 
  なお、この点について付け加えておけば、種子島会長は理事会に対し「7月総会で八木会長とする」ことを提案したが、討議の結果、それは含みとしておき、会長は6月の理事会で決めること、「含み」の部分は対外的には一切公表しないことを確認した。従って、「含み」についても、理事は新聞記者に話すなどのことをしてはならないのは当然の義務である。しかし、理事の誰かがそれをリークしたのである。そうでなければ、記者がその立場をわきまえず、特定のグループと一体になっていたことの現れである。

(2)「2日後に「会長補佐」に就任していた」 、「藤岡氏は会長補佐の職を解かれた

  八木氏が会長に復帰する見通しとなった反面、藤岡氏はあたかも失脚したかのような書き方になっているが、そうした事実はない。もともと「会長補佐」は会則にもない会長の相談役に過ぎないもので、2月27日の理事会が会長のみを選出して散会したことから緊急措置として設置され、福地、藤岡の両名が任命されていた。3月の理事会が八木氏を副会長に選任し、執行部が成立したので、役目を終えて2人の補佐が退任したというのが事実である。これを、藤岡氏にだけ言及し、あたかも権力闘争の結末であるかのように報じるのは悪意のある意図的な書き方で、読者に誤解を与えるものだ。

(3)「宮崎氏の事務局復帰も検討されている

  理事会ではこうした話は一切出ていない。理事会では、種子島会長が、2月28日に会長の指示したFAX通信の内容を宮崎氏が別のものと差し替え、理事会の投票者の実名まで公表する背信行為をおこなったことに触れ、「これは本来懲戒免職にすべきことだが、過去の宮崎氏の会への貢献と、今後更に会に対する攻撃をさせないという現実的判断から、宮崎氏から出されていた辞表を受理し、円満退職の形で処理したので了解していただきたい」という趣旨の発言があっただけである。本来、事務局の人事は記事にするほどのことではなく、しかもまだ決まっていないことまで書くのは、記者のニュースバリューの感覚を疑われる。

(4)「理事会では西尾幹二元会長の影響力を排除することも確認された
 
  理事会としてこんな確認など全くしていない。そもそも、会として特定の人物の「影響力を排除する」ことを確認することなどあり得ないことは、常識的に判断すれば明らかである。西尾氏に関する話題は新田理事が理事会に持ち出し、影響力排除を決議しようとまで提案したものである。これについては、「西尾先生は正しいこともおっしゃる」、「西尾先生の発言をとめることは出来ない」など様々な発言があり、それだけで終わったものである。もし、記事の通りのことを理事会として確認したとすれば、全理事がそれに拘束されることになり、そうしたことからも、あり得ないことが理解できるだろう。

(5)「会員の意見を聴いたところ、八木待望論が圧倒的だ」      

  種子島会長は、理事会直後の上記の電話取材では、このような話はしていない。
  最後に、この記事の問題点を、総括的に述べておく。

  第一に、3月28日の理事会決定は、会長人事ならいざ知らず、副会長人事を決めただけであるから、普通の感覚では15行程度のベタ記事(1段組み記事)扱いが常識である。それを3段にまたがる大きな見出しを付け、大々的に報道したのは、「八木会長復帰」を既成事実化しようとする記者の意図に発したものである。新聞記者としては起こった事実を報道することに徹するべきである。報道を利用して事実をつくり出そうとするのは、新聞という社会の公器の私物化と言ってよく、新聞記者のモラルとして絶対にやってはならないことである。

  第二に、3月29日付けの新聞記事は、前夜の9時53分に「産経web」でネット上に配信されていた。取材から配信までが極めて短時間であり、記者は予定原稿を準備していたと考えられる。4月3日、記者は「藤岡党籍問題」のガセネタを信じ込まされていたこと、謀略をしていた一味の一員であったことなどを事実上告白していたから、新聞記者の権限を利用した上記の党派的行動は最初から計画的なものであった疑いが強い。なお、一般会員の間にも数日前から、「八木会長復帰」の情報が流れていた事実がある。

  第三に、つくる会としては、新聞報道がなされた3月29日の午前中に、種子島会長、八木副会長の承認を得て、事務局から担当記者に対して正式に抗議した。FAX通信第170号(3月29日)でも、特に上記の(3)と(4)について「明らかに理事会の協議・決定内容ではありません」として会員に告知している。

  なお、4月30日の理事会で種子島会長と八木副会長が辞任したことを、産経新聞は全く報道していない。これは、教科書問題取材班が解散したことと関係している。会の「内紛」には一切介入せず、「内紛」が収まるまでは会の報道を一切行わないという産経新聞社の方針の反映であると考えられるが、「内紛」を書き立ててきたのが朝日新聞ではなく産経の記者であったことを考えると、これはむしろ歓迎すべき方針である。

  周知の通り、産経新聞は「新しい歴史教科書をつくる会」の発足当初から、一貫してこの会の試みを好意的に報道して下さった。今回、一部の記者の行動によってこのような事態に立ち至ったのは誠に残念でならない。しかし、会員各位におかれては、産経新聞全体と一部の記者の行動を混同することなく、正確な認識をお持ちいただくようお願いしたい。

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