平成18(2006)年5月30日(火)
 
新しい歴史教科書をつくる会声明
教育基本法改正に向けて実り豊かな国会論議を期待する
新しい歴史教科書をつくる会声明
教育基本法改正に向けて実り豊かな国会論議を期待する
 
平成18年5月30日
                       新しい歴史教科書をつくる会
 
  「新しい歴史教科書をつくる会」の願いは、私たちの国・日本の長期にわたる国家形成と発展の歴史、およびその中で育まれた豊かな文化伝統に誇りと愛着をもち、私たちの先祖の努力と苦悩を深い共感をもって追体験し継承しようとする日本国民を育成することである。そのために私たちは、『新しい歴史教科書』およびその改訂版を世に問うた。

  およそ世界のどの国の歴史教育も、自国の歴史と文化伝統への誇りと愛着を育成することを通じて、自国の未来を担う喜びと責任感に満ちた、すなわち愛国心に満ちた国民を育成することをめざすものである。ところが、ひとり我が国だけは、日本人としての誇りをもち自国を愛することを罪悪とし、自国の文化伝統をむしろ卑下するがごとき歴史教育が横行してきた。また、それは歴史教育のみにとどまらない。

  このような特異でいびつな教育風土が形成された原因は、多くの識者がすでに指摘してきたように、日本の戦後教育の出発の仕方に胚胎している。現行の教育基本法は、その原案段階(教育刷新委員会「教育基本法要綱案」)においては、教育の目標について次のように謳っていた。「普遍的にして、しかも個性ゆたかな、伝統を尊重して、しかも創造的な、文化をめざす教育が普及徹底されなければならない」。しかし、制定された現行法の文言は「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」である。GHQの強い意向により、原案から「伝統を尊重して」が削除されたのである。

  このような教育基本法を「教育の憲法」としてきた以上、わが国の戦後教育が、自国の歴史と文化伝統を尊重せず、愛国心を育むことをタブーとしてきたのはむしろ必然であった。この点こそ、私たち「つくる会」が、現行の教育基本法に対して強い不満を抱かざるを得ない所以である。

  さて、本年4月末、政府は教育基本法改正案を国会に提出し、5月連休明けから国会審議が始まった。また、民主党も独自案として「日本国教育基本法」案を提出した。

  これより先、超党派の議員からなる「教育基本法改正促進委員会」は、4月11日、「新教育基本法」案を公表した。

  政府案は、70回に及ぶ与党協議を経て成案を得たものである。この論議のなかでかねて指摘されてきた事項は三点に集約される。

  一つは「愛国心」の表現を巡って、自民・公明両党間で調整が難航し、最終的に、第二条(教育の目標)の五として「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」とした。これに対し民主党案は、前文において「日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、伝統、文化、芸術を尊び(後略)」と謳っている。一方、「促進委員会」案は第一条〔教育の目的〕の二項で「(前略)あらゆる段階において、伝統と文化の尊重、愛国心の涵養、道徳性の育成を図るものとする」としている。

  二つ目の宗教的情操の涵養については、政府案においては現行法の一項に「宗教に関する一般的な教養」を挿入するにとどめ、「宗教的情操の涵養」は明文化されなかった。一方、民主党案では「宗教的感性の涵養」と謳っている。「促進委員会」案は第十六条〔宗教に関する教育〕の二項で「宗教的情操の涵養は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、教育上特に重視するものとする」と記述している。

  三つ目は、現行法十条の「不当な支配」について、政府案はこれを理念として引き継いでいるが、民主党案ではこれを削除している。「促進委員会」案も同様である。

  私たち「つくる会」は、国会が六十年目にして教育基本法改正に着手したこと及び各党国会議員が積極的に改正案策定に参加していることに敬意を表するものである。冒頭述べた私たちの立場からすれば、これら三項目については、促進委員会が提起した「新教育基本法案」の方向で、政府、野党間で特別委員会の審議を通して、より良きものに修正されることに強い期待感をもつものである。

  私たちは、「この国の再生は教育から」を確信し、憲政史上、画期的な与野党共同の教育の根本法策定が現実のものとなるよう強く希う。そのうえでさらに私たちが望むのは、全国民の注視のもと、各法案のそれぞれに関し、国会において徹底的に論議が展開されることである。この論議が、与党内某党への配慮とか、政権奪取の党利党略などといった非本質的要素によって歪められず、この国の未来のために正々堂々となされることこそ、私たちが望むことである。日本の議会政治の成熟の度合いが、いま試されている。国会議員諸氏の愛国心が、いま試されているのである。
(以上)
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