集団自決と教科書検定
――「新しい歴史教科書をつくる会」の見解――
平成19年11月30日
新しい歴史教科書をつくる会
会長 藤岡信勝
(1)沖縄県は、先の大戦において米軍との間の戦場となり、激戦が戦われ多くの県民が尊い犠牲となった。しかし日本軍と県民の一体となった果敢な戦いが、米軍をして本土決戦をためらわせ、今日の日本の平和と繁栄の礎となった。この事に対し、日本国民の全てが深く心に刻み、感謝の念を忘れてはならないと考える。とりわけ慶良間諸島における集団自決は、誠に痛ましい戦争の犠牲であって、二度と再びこのような事を繰り返さないよう肝に銘じなければならない。さらに戦後も27年間の長きにわたって米国の施政権下におかれることによる県民の負担の大きさについても、日本国民が忘れることがあってはならないと考える。
(2)大戦末期に起こった集団自決の記述についての文科省の教科書検定が重要な局面を迎えている。上に述べたように、私たちは集団自決の痛ましさについて、心に刻まなければならないと考えるが、だからこそ歴史の史実が歪めれ事があってはならないと思う。慶良間諸島の二人の守備隊長が住民に対する集団自決命令を出していない事は既に立証ずみの確定した史実である。本年3月に公表された文科省の検定は遅きに失したとはいえ、既に明らかになっていた史実に忠実に行われたもので、それ自体は一点の瑕疵もない。
(3)ところが文科省は、教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民大会の参加者が「11万人」であったと報じられるや、従来の方針を転換し、教科書会社の訂正申請を誘導し、「日本軍の強制」を意味する記述の復活を認めようとしている。しかし、これは教科書検定制度の根幹を揺るがすもので、「強制」記述の復活を決して認めてはならない。また方針見直しのきっかけとなった大会参加者「11万人」は実際は2万人弱に過ぎなかったことが科学的に証明されている。勿論、仮に参加者が20万人だったとしても、数の力で歴史を書きかえる事は許されない。
(4)文科省は、訂正申請を認めるための布石として、関東学院大学の林博史教授を検定審議会が意見を聴取すべきメンバーに任命した。しかし林教授の研究は、沖縄タイムスが昨年10月3日付けで報道した米軍公文書の史料についての誤訳に見られるように、日本軍悪玉説を前提としたものであり、学問的研究とはいい難い。「軍命があった」とするその主張は英語文書の単純かつ意図的な誤訳によるものに過ぎない。この事は林教授の参考人としての資格をも疑わせしめるものである。
(5)以上の事から、集団自決をめぐる問題について「つくる会」の見解を箇条書きに整理すれば次の通りである。
@文科省は、検定審議会の意見聴取の対象として集団自決問題についてバランスのとれた見解を持ち、かつ、このテーマに関する実績のある学者、研究者、作家を必ず入れなければならない。
A拙速に結論を出すことはさけ、代表的な有識者による公開討論会を組織し来年3月に明らかになる「沖縄集団自決冤罪訴訟」の一審判決をも視野に入れて、結論は次年度以降に先送りすべきである。
B上記訴訟の一審判決において敗訴した場合、大江健三郎氏はノーベル賞を当然ながら返上すべきである。
C隊長命令説は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の支給にからんで虚偽の証言がなされたり、隊長命令文書が創作されたりすることによって維持されて来た経緯がある。今事実を明らかにしたからと言って既に支給された遺族年金について、とやかく問題にする日本人は一人もない。今こそ勇気を持って歴史の真実に合致した教科書が子供に提供されることを、沖縄の方々も是非認めて頂きたいと念願する。
D沖縄の言論空間が一面的に偏向していると言う印象を多くの人が持っている。最大の危険は、集団自決問題を利用して沖縄と本土の人々を離間させ、敵対させる国内外の勢力につけいられることである。美しい島沖縄が日本国の一部であり続けることは、沖縄の人々にとって、また本土の人々にとっても幸せなことであると確信している。
以上
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