第227号 平成20年 3月06日(木)

自民党「歴史検証プロジェクトチーム」で講演!
  藤岡会長・杉原副会長が「日本の歴史検証の問題点」で
学習指導要領(案)に対する「つくる会」のコメントを発表

 
  新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝会長、杉原誠四郎副会長は、3月6日(木)に開催された「自民党国家戦略本部『歴史の検証プロジェクトチーム』(座長・萩生田光一衆議院議員)」の会合に出席し、「日本の歴史検証の問題点」と題して講演しました。
 このプロジェクトチームは、本年1月、自民党国家戦略本部の中に設置されたもので、26名の国会議員により構成、前回まで、国立公文書館、国会(衆参両院)、司法(最高裁判所、法務省、警察庁)から歴史の検証の基本的資料となる公文書の取扱い等についてヒアリングを行ってきており、民間では「つくる会」が初めてです。
 会合では、藤岡会長、杉原副会長が下記の「日本の歴史検証の問題点」に基づき講演し、その後、各議員と意見交換を行いました。
 講演の内容は次の通りです。

日本の歴史検証の問題点

                            平成20年3月6日
自民党国家戦略本部「歴史の検証プロジェクトチーム」会合にて
                           新しい歴史教科書をつくる会
    会 長 藤岡 信勝
                               副会長 杉原誠四郎

(1)歴史認識の相違から生じている国際問題・教科書問題の現状 @南京事件

 私ども「新しい歴史教科書をつくる会」では、@南京事件、A従軍慰安婦、B沖縄集団自決を歴史教育を歪める「反日・自虐史観」の三大テーマとして位置づけ、歴史の検証と誤った歴史記述・教科書記述の是正に鋭意取り組んできた。昨年、平成19年は、奇しくもこの三つのテーマが一挙に集中し、重なり合い、日本における歴史検証をめぐって政治・行政の問題点が露呈した年となった。
南京事件については、「南京事件70周年」の年であり、これを期してアメリカと中国を中心に史実を極端に歪めた反日映画がつくられ公開された。これらの映画は、アメリカにおいても中国国内においても制作者が期待したほどの反響をよばなかったとはいえ、今後長期にわたって与える影響は大きい。これに対し、日本側では「南京の真実」という映画シリーズが企画され、そのうちの「第一部・7人の『死刑囚』」がさきごろ完成して公開された。当会各支部もこの上映会に取り組み、盛況となっている。しかし、本編ともいうべき劇映画の部分は日米両国で様々な妨害に遭遇し、撮影は困難を極めているという現状がある。
 中国・南京の「南京大虐殺記念館」は、昨年12月、改装されオープンした。展示面積は10倍に拡張され、一部に是正されるとの希望的観測もあった犠牲者数「30万人」もそのまま維持された。残虐な偽写真の展示も一向に改まっていない。資料の充実ぶりも著しい。日本語の関連文献もほとんどが翻訳されている。今後は一見、学問的な体裁をとった研究が中国において活発になることが予想される。中国政府は表向き、南京事件に言及することを避けているが、その陰で、歴史認識に関わるこのテーマを21世紀を通じて対日戦略・宣伝の根幹に位置づけるべく本腰を入れて取り組もうとする強い意志が伺える。さきごろの重慶におけるサッカー試合の観客の常軌を逸した振る舞いにも現れているとおり、1994年から始まった反日・愛国教育の効果は計り知れないものがある。記念館の開館に際し日本の上海総領事館が遺憾の意を表明したのは評価できるが、日本政府は一言のコメントも発していない。
日本国内では、この10年、日本「南京」学会が、市民研究家のパワーも組織して、史実の発掘と事件の全体像の見直しに目覚ましい成果をあげてきた。日本国内の研究では、すでに大勢は決した。しかし、その成果が必ずしも正当に評価されず、特に教科書検定行政との乖離は深刻である。今後、教科書検定をめぐる焦点の一つとなるであろう。また、足かせとなっている「近隣諸国条項」の見直しも急務である。
 昨年3月、「南京事件の真実を検証する会」が結成され、超党派議員の参加する3回にわたる研究会が国会内で行われた。4月、温家宝来日に際しては6項目の公開質問状を提出した。12月には、同会主催の「南京事件70年国民の集い−参戦勇士の語る南京の真実」という集会が開催された。90歳代の元将兵の方々が臨場感に満ちた証言をされ、大きな感動を与えた。おそらく最後となるであろうこの南京戦体験者肉声証言イベントのDVD記録が近く完成する。
 政界では、昨年7月、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の「南京事件小委員会」が、長期にわたる検証結果を公表した。民主党にも歴史認識を課題とする議員連盟が結成されている。また、超党派の「中国の抗日記念館から不当な写真の撤去を求める国会議員の会」が結成されている。歴史認識にかかわる国際問題に正面から取り組む近年のこうした国会議員の動向は刮目すべきものである。

(2)歴史認識の相違から生じている国際問題・教科書問題の現状 A従軍慰安婦B沖縄集団自決

 昨年は、従軍慰安婦問題と沖縄集団自決問題では、大きな打撃と深刻な後退を味わった年でもあった。昨年7月30に、アメリカ下院は、旧日本軍が慰安婦を強制連行して女性を性奴隷として虐待したかのような、ありもしない妄想をもとに対日非難決議をおこなった。一部には、アメリカ議会の決議は無数になされ、アメリカ政府に対する拘束力もないことをもって、大きな問題ではないと見る向きもあるが、誤りである。現に、その後、対日非難決議は、カナダとオランダの議会決議に飛び火し、さらにはEU議会までが同様の決議を行うに至った。
 従軍慰安婦問題は、過去12年間の教科書問題の原点となった問題である。日本国内では、メディアを巻き込んだ激しい論争を経て、すでに決着のついた問題である。発火点となった中学校の歴史教科書からも従軍慰安婦という言葉は消えている。「反日・自虐史観」を推進する日本の国内勢力は、江戸の仇を長崎ならぬ世界の舞台で果たそうとして成功したことになる。なぜ、こうした事態になったのか、その要因として3点指摘したい。
第一は、「セックス・スレイブ」という言葉の発明である。史実よりも実態よりも何よりも先に、一定のイメージを喚起する言葉を広め定着させることで人々の認識を操作するという宣伝技術が駆使されているのである。その証拠に、産経新聞の古森義久氏がアメリカのテレビで討論したとき、慰安婦に給料が払われていたと発言すると司会者が驚いたというエピソードがある。この言葉が国際的に使われたのは、1996年の国連人権委員会におけるクマラスワミ報告であるが、慰安婦問題にこの言葉を最初にあてはめ広めたのは、戸塚悦郎という国連人権委員会で活動していた日本人弁護士である。日本が発信源なのである。
 第二は、元慰安婦の女性がアメリカ議会の公聴会で証言したことである。被害者を登場させるという手法を日本の反日派が開発し、初めは日本の裁判所の法廷で用いられ、国際会議でためされ、ついにはアメリカの議会まで舞台にするようになった。元慰安婦の本人が現れたからといって強制連行の証拠になるわけでもなく、その証言が真実である保証は何もないのだが、演出として効果的である。
 第三に、「河野談話」の存在である。日本政府が公式に認め謝罪したと解される政府見解の存在が最大の決定要因である。第一と第二の要因だけでは、決議まで行ったかどうかは疑わしい。日本政府が認めているということが最後の決め手なのである。韓国政府との政治的妥協の結果として生まれた文書が国際的にどのような意味を持つか教訓として生かし、「河野談話」の撤回に向けた道筋をつける必要がある。
 集団自決問題はかねてから議論の的になっていたテーマであるが、昨年3月30日、文科省の教科書検定で、軍の「強制」を意味する記述を削除させた検定結果が発表されるや、沖縄を中心に一大騒動となった。9月29日、宜野湾市で開かれた参加者2万人足らずの県民大会を「11万人」と誇大宣伝することで政府を方針転換させた沖縄左翼の宣伝戦の勝利である。文科省による異例の再検定の結果、「軍の強制」という直接的表現は認められなかったものの、「強制集団死」というご都合主義の左翼用語が初めて認められ、反軍的記述が大増殖した。検定以前の検定提出本(白表紙本)よりも遙かに悪くなったのである。
 ここでも重要な要因の一つとして、言葉の問題を指摘したい。検定結果が公表されると、朝日新聞や沖縄の新聞は、一斉に「文科省が軍の関与否定」と報道し始めた。検定過程でも教科書記述の文言としても「関与」という言葉は一度も問題になっていない。ここには大がかりな言葉のトリックが隠されている。「関与」は一見すると「強制」や「命令」よりも弱い言葉のように感じられる。そこで、軍の「関与」までは否定していない、と弁解したくなる。ところがいったん「関与」を認めると、実は結果的に「強制」を認めたのと同じ効果が生じるのである。なぜなら、「関与」という語は、細目の具体的事実に言及することなく対象者や組織を「クロ」と断定することのできる便利な言葉だからである。こういう「関与」という語の謀略的使用法に反日的メディアは完全に習熟しており、意図的な言語操作によって従軍慰安婦問題などで過去にも戦果を挙げてきた。それに対し、今回の集団自決教科書検定問題では保守陣営の言語感覚の鈍さが露呈した。(詳細は、藤岡信勝「『関与』に躓いた文科省検定」『正論』平成20年3月号参照)
 集団自決については、今年1月に、座間味島で新しい証言者があらわれ、梅澤隊長が住民に「自決するな」と「命令」し、これを受けて村長が自決のために忠魂碑前に集まっていた住民を解散させていたことが明らかになった。梅澤隊長が明確に住民の自決をとめなかったことが集団自決につながったという大江健三郎氏らの論拠は完全に崩壊したことになる。(産経新聞2月23日付東京本社版、藤岡信勝「集団自決『解散命令』の深層」『正論』4月号)大江氏らを被告とする名誉毀損訴訟の大阪地裁判決は、3月28日に予定されている。

(3)歴史史料の収集・保管・整理・公開について

 歴史の検証を進める上で、歴史史料の問題は極めて重要である。このプロジェクトチームで行った過去3回のヒアリングの資料を拝見した。国会と裁判所資料については、特段の問題を感じなかった。問題の焦点は行政文書の扱いにある。日本では、歴史史料となるような行政文書の扱いについて、その収集・保管・整理・公開に関する制度が整備されていない。
昭和46年に国立公文書館がつくられる際、各省庁の代表者を集めた公文書館設立のための連絡会議が招集された。当時大蔵省の官僚として委員を務めた秦郁彦氏によれば、担当者に問題意識が乏しく、建設的な提案をしても一切取り上げられなかったという。例えば、公文書館の運用上最も重要なアーカイヴィストの養成というテーマについて、館長予定者は全く考えていなかった。公文書館側は、外務省の外交文書、防衛庁の旧軍関係史料、大蔵省の財政史文書などを求めたが、大蔵省は断り、大蔵省に文書館をつくり秦氏はその館長となった。以下、秦氏その他の方々の意見も参考にして、いくつかの問題点を指摘したい。
 第一に、機密文書の公開に関わる問題点である。この点については、「オートマチック・ディクラシフィケーション」(自動的機密文書解除システム)というコンセプトを確立し、浸透させる必要がある。現状は、研究者・利用者が文書で要望を提出し、それを担当者が個別に審査して1ヶ月後に回答する、というものになっている。担当者の判断、裁量に委ねられている。事務量が膨大で、時間がかかりすぎ、担当者の恣意が幅を利かせる。それをやめて、一定の年限が経過した文書については機械的に公開する。それが上記のコンセプトの意味である。年限は30年にするか、50年にするか、当事者が死に絶える75年とするか決めればよい。
第二に、文書に記載された関係者のプライバシーに関わる制約の問題がある。プライバシーの問題が壁になって、多くの文書が未公開になったり、公開されても研究に利用できなくなったりしている。例えば、防衛省防衛研究所戦史室図書館には、戦争に関わる個々の軍人や関係者の史料が大量に寄贈されているが、整理も公開もされていない。個人が寄贈した以上、公共の利用を意図したものと解されるにもかかわらず、プライバシーの問題で非公開とされ、死蔵されたままになっている。また、内務大臣に譴責された120年前の知事の名前を公文書からスミで消してあったという例もある。公務員には原則としてプライバシーはないという原則を確立し、その上で個別に例外を設けるようにすべきである。公務員を一般市民並みの基準で扱っているのは不適切である。
第三に、人員の配置と養成の問題である。朝日新聞2月5日付記事によれば、国立公文書館の人員は、米国の2500人に対し、日本は42人で2けた違いである。人口比でいえば、1250人いてもおかしくない。日本には戦前から官治主義の伝統があり、国民が役所の資料を見るという発想に乏しかったことが未だに尾を引いているといえそうだ。秦氏によれば、奈良時代の役人の8割は文書管理に当たっていたとのことで、役人の半分は資料整理に回し、上級職公務員を充てるべきだと秦氏は提言している。配置された人員の数はその職務の性格を規定する。42人では多くが事務屋になるほかはないであろう。損門職としてアーカイヴィストを養成することが急務である。しかし、伝統は一挙にできるものではないから、端緒としてはアメリカから専門家を「平成のお雇い外国人」として招聘する必要があろう。
第四に、史料の保全の問題も深刻である。菅直人大臣のおり、厚生省の薬害エイズ関係の資料を公開させたことがあった。官僚の習慣として、文書は隠してもよいが捨てるべきではないとされてきたが、厚生省の事件以後、隠しても見つかるならば廃棄してしまえという風潮が外務省にすら蔓延しているという。由々しいことである。これを防止するには、重要文書を廃棄した公務員に刑事罰を科す法律をつくる必要がある。
 第五に、公文書の管理は、省庁ごとにバラバラに行われており、統一した基準がない。公文書・歴史史料の収集・保管・整理・公開について、アメリカの制度を詳しく調べた上で、それを参考にして統一基準をつくり、各省の文書館は国立国会図書館の分館として同じ規則で運営するようにすべきである。

(4)日本の名誉にかかわる情報発信のシステムの構築について

 日本という国は有史以来、外国文献の翻訳には並々ならぬ努力を傾注してきた国で、翻訳文献を最も多量に保有する国でもある。しかし、他方、日本側の文献について翻訳して外国に発信することについては等閑視してきた。日本語が欧米語とも中国語とも著しく異なり、日本と外国の間には高い言語の壁がある。そのため日本の名誉にかかわることでも、日本国内で行われている議論や研究成果は外国には極めて微量にしか伝わらない。
昨年、従軍慰安婦問題で世界各地で非難決議が行われたことも、日本からの情報発信の決定的不足が一因である。日本人有志の意見広告が従軍慰安婦決議にかえって悪く影響したという岡本行夫の意見は極めて短期的に見た場合に言えることで、長期的に十分に情報を発信していたら解決していた可能性がある。南京事件問題も同様である。中国が依然として公式に「30万人虐殺」と言えるのも、日本側からの情報発信の不足が一つの要因であるとみることもできる。
 そこで、昨年12月1日、日本「南京」学会は、「中国の抗日記念館から不当な写真の撤去を求める国会議員の会」平沼赳夫会長宛に「日本の名誉を守るための翻訳資料を作成する予算措置の要請」なる決議をした。東中野修道会長は、当会に窓口業務を要請し、本年2月14日、杉原誠四郎副会長、鈴木尚之事務局長の同席のもと、同要請文書を同会事務局長稲田朋美議員に提出した。
 このような日本の名誉にかかわる問題で計画的な情報発信のシステムを作らなければ、例えばこの南京事件でも、5年後、10年後に世界の各地で非難決議が行われるようにならないとも限らない。   

以上

 

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