平成16(2004)年1月22日(木)
今年のセンター試験 世界史に「強制連行」 研究家「疑義多く中立性問題」
産経新聞  平成16年1月21日
 

 
 十七日に行われた大学入試センター試験の世界史で、当時の言葉としてはなかった朝鮮人の「強制連行」が選択肢で出題され、確定的な史実として取り扱われていたことが分かった。「強制連行」は教科書に記述はあるものの、疑義も多数出されており、入試問題を通じて、一面的な教科書記述が確定的な史実として受験生に刷り込まれていく構造が浮き彫りとなった格好だ。 

  世界史Bの第一問はアジアアフリカでの抵抗運動や民族運動に関する問題。例文にある「日本統治下の朝鮮」という文言に下線が引かれ、(1)朝鮮総督府が置かれ、初代総督として伊藤博文が赴任した(2)朝鮮は日本が明治維新以降、初めて獲得した海外領土だった(3)日本による併合と同時に創氏改名が実施された(4)第二次大戦中、日本への強制連行が行われた−という四つの選択肢から選ぶ問題。センターが発表した正解は(4)となっている。 

  平成五年度の本試験世界史でも四選択肢のうち、誤りを含む選択肢を選ばせる問題で「強制連行」が登場。正しい選択肢として処理されたことがあった。昭和三十四年に外務省が在日朝鮮人の実態について発表した調査結果では国民徴用令による戦時徴用者はごく少数に過ぎず、大半が自ら日本国内に職を求めてきた渡航者らや鉱工業や土木事業の募集に応じて自主的に契約した人たちで占められている。 

  ところが教育現場では日本側の公式文書にあるこうしたニュアンスは切り捨てられ、戦時中、一貫して連れ去りが行われたような誤解や、法律に基づく戦時勤労動員と当時の言葉としてなかった「強制連行」とを同一視する歪(わい)曲(きよく)が生まれている。

 歴史教科書の研究家、上杉千年氏は「こうした選択肢が正解として扱われ、受験生は不正確な理解を刷り込まれてしまう」と指摘。皇学館大学の新田均助教授も「学説で割れている事象を入試で確定的に扱うのは中立性という点で問題がある」として採点からこの問題を除外するよう求めている。

 文科省では「高校教育や教科書記述の実態に照らし妥当な出題だったかどうかをセンターで確認するよう伝えた」としながらも「入試は学んだ知識を試す場。教科書で扱われた素材が入試に出題され、入試自体が公正であれば、採点から除外する必要はないのではないか」と話している。 ≪国民徴用令と教科書≫ 昭和14年7月に施行された国民徴用令が内地と同様、朝鮮半島に適用されたのは昭和19年9月から12月までの4カ月間。それまでは自由募集や官の斡旋(あっせん)で渡航者の自由意思はあり、徴用令に基づく渡航も拉致と異なり、法律に基づくものだった。教科書記述に中国、韓国への配慮を課す「近隣諸国条項」が検定基準につき「侵略」「強制」などの表現に検定意見はつけられないため、朝鮮統治や倭寇も「侵略」とした教科書もある。「強制連行」は高校教科書のほぼすべてで記述がある。