大学入試センター試験の世界史で、「朝鮮人強制連行」を正解とする問題が出されていた。多くの教科書には書かれているが、史実に反し、不適切な出題である。
いわゆる「朝鮮人強制連行」は、戦時下の昭和十四年から二十年にかけ、約七十万人の朝鮮人労働者が朝鮮半島から日本内地へ渡ってきた事象を指す戦後の造語である。しかし最近の実証的な研究や外務省の公式文書などにより、大半は自由意志に基づく渡航であり、そうでない場合も国民徴用令に基づく合法的な渡航だったことが明らかになっている。
センター入試は、国公私立大学を目指す全国の受験生が挑戦する第一関門である。それぞれの専門分野の大学教授らが学習指導要領などに沿って、問題を作成している。半ば公的な共通入試だ。不確かな用語を使い、それが歴史的事実であると答えさせる問題は避けるべきである。
朝鮮人強制連行説が教科書に書かれるようになったのは、昭和五十七年の「侵略」「進出」誤報事件以降だ。当時の官房長官談話に基づく近隣諸国条項が検定基準に追加され、戦前・戦中の日本が中国や朝鮮半島で行ったことを「侵略」「強制」とする表記に意見が付けられなくなったためだ。
しかし、強制連行説の信憑性に疑問が生じてきた以上、それを教科書に書くことも間違いである。
昨年九月、北朝鮮が拉致事件の矮小化をねらい、国連総会で「日本が朝鮮半島占領時代に八百四十万人を強制連行した」と主張した問題が、日本の国会でも取り上げられた。川口順子外相は外務省が昭和三十四年に調査した資料に基づき、戦時中に朝鮮半島から渡航してきた労働者の大半は自由意志だったとの認識を示した。
これからの教科書検定では、渡航をすべて「強制連行」とする記述には意見を付けるべきである。
この問題に限らず、「慰安婦」「創氏改名」などでも強制だったとする一方的な記述が検定をパスしている。最近、日本の統治が韓国近代化に果たした役割を評価するエッカート米ハーバード大教授らの研究も注目されている。こうした歴史の「明と暗」「正と負の遺産」に光をあてた客観的な学問研究の発展を期待したい。