最新刊 !!
大人の旅 古都の美をめぐる
田中英道(つくる会会長)【監修】
扶桑社/1,500円(税込) 平成15年10月20日発売

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旅行会社のガイドブックでは物足りない
でも美術書では難しすぎるというあなたへ
美の粋をきわめる、最高・最良の鑑賞ガイド登場!
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本書の五大特徴!

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〜もくじより〜
まほろばの都 奈良

法隆寺/中宮寺/当麻寺/薬師寺/興福寺その1/東大寺その1/新薬師寺/唐招提寺/室生寺/興福寺その2
東大寺その2

王朝の美 京都

広隆寺/神護寺/東寺(教王護国寺)/醍醐寺その1/平等院/妙法院/六波羅蜜寺/西芳寺(苔寺)/慈照寺
龍安寺/大徳寺/知積院/醍醐寺その2/二条城/建仁寺/清水寺/桂離宮

まえがき

奈良、京都の古典の美に感動する

田中 英道

 世界の歴史的な都市を歩いてみて、その歴史的意義からいっても、その芸術的価値からいっても、奈良はアテネ、フィレンツェと並んで、世界の「古典」と呼びうる都市だ、と私は確信しています。それは何よりも、七、八世紀から十三世紀にかけて形成された高い神仏習合の文化をもつ.「古典」の都市として稀有であるからです。

 アテネは、紀元前五世紀にギリシャ文化を創造した都市です。廃嘘ではあっても、いまだにパルテノンの神殿を中心に、建築、彫刻が残されており、世界の人々から「古典文化」として仰がれています。アテネは単にヨーロッパの古代都市というだけでなく、われわれ東方の人間にも共通する文化を感じさせます。それだからこそ、東西両方の「古典」といえるのです。

  フィレンツェが、十五世紀に「キリスト教」文化の花を咲かせた「ルネッサンス」美術の都市であることは誰でも知っています。十二世紀ごろから始まる西欧文化は、かつては「暗黒の中世」などといわれていましたが、それは誤りで、まさしく十二世紀からその文化的発展が始まり、ルネッサンス期に完成をみたのでした。フィレンツェの街は、すでに「近代」ヨーロッパ都市文化の「古典」といってよいでしょう。

  奈良の都はあたかも唐の長安の模倣のようにいわれますが、その文化の内容は中国文化とは大きく異なっています。法隆寺・東大寺などの倣轍ばかりでなく、周囲の山々に包まれた春日大社などの神社は、この都市が神仏習合の都市であることを示しており、中国には見られないものです。これは、京都にも同じことがいえます。また、日本に残る世界最古の木造建築群は、日本人が樹木という自然の恵みを大事にする精神を保ってきた証拠です。日本の木造建築は、世界の建築の原型なのです。

 そして、寺には仏像が安置されています。「ほとけ」の「け」は「形」を意味する言葉であり、釈迦やその他のほとけたちは、日本では仏像の「形」をとって礼拝されています。その形は美しさをともなって、現代の私たちに芸術作品として語りかけてきます。戦乱や火災による破壊にも関わらず、これらの芸術作品を保存し続けてきた日本の祖先たちの心を、「近代」人の私たちは受け継がねばなりません。これらは、『万葉集』が天皇と人民すべてが参加して編まれた歌集であったように、日本人が一体となってつくってきたものなのです。それらの作品が「古典」と呼びうる所以は、そこに「高貴なる単純、静かなる偉大さ」(ウィンケルマンの言葉)があるからであり、その「古典」性はアテネ、フィレンツェの美術と共通しているのです。

 京都は平安時代から長い田、日本の首都であったために、その優推なたたずまいが、応仁の乱などの戦乱のために失われてしまったのは残念なことです。現在残されている建築の多くは、江戸時代以降のものなのですが、その中で、宇治の平等院は平安期の美しい姿を今に伝える貴重な例です。その様式はちょうどイタリアの様式に対して、それを一層洗練させたフランスのそれに似ているようです。

 見る、ということは、人生体験の第一歩です。ただ「百聞は一見に如かず」という言葉は、決して映像やヴァーチャルなものを見ることではないのです。まずそれ自体を見ること、そして見る対象に評価の眼をもつことが大事なのです。それは人間を見る眼と同じで、人生を豊かにし、すぐれた祖先たちが紡いできた歴史との連続性を実感させるものです。

 この書は拙著『法隆寺とパルテノン』(祥伝社)のガイドブック版というべきものです。見るべき価値のあるものには五つ星で印をつけました。私の世界各国での美術体験に基づいた、評価の指標でもあります。参考にして頂ければ幸いです。本書の編集・執筆にあたっては、扶桑社書籍編集部の吉田淳氏の手を煩わせました。氏は私と奈良・京都旅行をしたこともある東大美術史学出身の若い後輩です。記して感謝いたします。