第5章 世界大戦の時代と日本>2.第二次世界大戦の時代>63
共産主義とファシズムの台頭/p260

共産主義

 ヨーロッパから発達した二つの政治観念が,1920〜1930年代に世界に広まり,それぞれ革命運動を生み出し,政治体制をつくりあげ,20世紀の歴史を動かす二大要因となった。
 一つは,マルクスの思想に始まり,ロシア革命を引きおこした共産主義である。これは,世界に豊かな階級と貧しい階級との対立が発生する矛盾を解決するために,生産手段を自らもたない貧しい労働者階級が団結して権力をにぎり,経済を計画的に運営することを目的としていた。そのために私有財産を否定し,一党独裁の道が選ばれた。
 レーニンの死後,ソ連ではスターリンの指導のもとに,1928年から5か年計画が実行され,重工業の建設や農業の集団化が進められた。けれどもこの国は,唯一の独裁者が党を足場にして権力をにぎる独裁国家でもあった。スターリンは秘密警察や強制収容所を用いて,人々を大量に処刑した。ソ連は無階級社会をつくるという理想から出発したはずだが,現実には苛酷な強制労働と膨大な数の犠牲者をともなっていた。

ファシズム

 もう一つの政治観念は,ドイツとイタリアを中心とし,フランスやスペインにも波及したファシズムである。ドイツではこれをナチズム(国家社会主義)という別の言葉でよぶ。
 第一次世界大戦後,ドイツは巨額の賠償金を背おわされ,はげしいインフレ(急激な物価高)におそわれ,国民の不安が高まった。このころ,ヒトラーがナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)を率いて登場し,民族の栄光の回復をスローガンにかかげると,人々はしだいに彼に引きつけられた。ナチス党は,世界恐慌による国内の混乱に乗じて,国会に230議席を占める第一党に躍り出た。1933年,ヒトラーは政権をにぎって,独裁体制をつくりあげた。
 ナチスにとっていちばん大切なことは人種であった。ゲルマン民族の純血を守るという理念のためには手段を選ばなかった。共産主義が世界に広がることをおそれる感情も強かった。ヒトラーの独裁国家はスターリンと同様に,秘密警察や強制収容所を用いて,大量の殺戮を行った。ナチス党はソ連の共産党と同様に,国家を意のままに左右する強大な権力機構であった。