平成15年7月号(通巻39号)より
夏休み帳問題
採用校激減の理由
補助教材の学習指導要領に沿わない偏向記述は通達違反
石川県で二百四十三校から三校に激減
 昨年九月、石川県の小学六年生用に販売された夏休み帳「わたしたちの夏休み」(民間会社発行の補助教材)に「七尾へ連れてこられた中国人」という記事が掲載されていることが発覚し、県議会において記述内容や採用の経緯などをめぐって論議されていました。

その後も何度か県議会で論議されていましたが、去る七月三日付の「北國新聞」によりますと、「夏休み帳」の採用校はわずか三校だったことが判明しました。

「県教組の組合員が編集する小学校の補助教材『夏休み帳』の採用が、昨年の二百四十三校から今年は三校になったことが分かった。県教組は二日、県教委の採用状況の調査が圧力になったとし、抗議の声明を出した。
声明では、『夏休み帳』と『中学生の学習帳』に対する調査が採用を判断する校長に圧力になったとした。さらに、校長に『夏休み帳』を採用しないよう学校管理規則から『逸脱する指導』があったと指摘。川淵尚志委員長は『厳しく批判していく』と述べた。 柱山嗣廣県教委次長は『特定の夏休み帳が対象の調査ではなく圧力とはならない。採用を控えるような指導も一切していない』と話している」


そこで、石川県教育委員会に確認してみますと、「夏休み帳」など補助教材の採用は各校長の責任で決定し、市町村教委に届け出ることになっているとのこと。また、今年二月の市町村教育長会議で適切な採用手続きを踏むよう指導し、その採用の実態について昨年九月と今年五月の二度、県内全二百五十五校(児童数、約六万八千人)を対象に調査したそうです。

 そもそも、石川県の「夏休み帳」は、石川県学校生協が全額出資する「有限会社石川県学校用品」が発行し、六人からなる「夏休み帳」編集委員会は全員、石川県教職員組合の組合員です。

驚いたことに昨年は六万部も販売され、約九〇%の児童に行き渡っていました。しかし今年度は三校(一・二%)、つまり八百人ほどですから、まさに激減です。

石川県教委の山岸勇教育長は、昨年九月の県議会文教公安委員会において、この問題を取り上げた吉田歳嗣議員などの質問に「補助教材の内容も学習指導要領に沿うものであるべきだ。歴史教育は児童・生徒の発達段階に応じ、客観的事実に基づいた指導が必要」と、補助教材の取り扱いに対して適切な見解を述べ、その採用について実態調査することを明言していました。

また、十月の県議会一般質問でも、宮元陸議員の質問に「子どもが独自に自由な学習を行う夏休み帳のわずかなページで断片的に歴史を教えるのは慎重にしなければならない」と答弁して、夏休み帳に掲載された「七尾へ連れてこられた中国人」といういわゆる「強制連行」の記事に対しても批判的な姿勢を示唆していました。

さらに本年一月二十四日、「教科書の採択を考える県民の会」(諸橋茂一会長)が公開質問書を県教委に提出した際にも「補助教材の採択を慎重に見極めるよう市町村教育委員会に強く指導した」(一月二十五日付「北國新聞」)と述べています。

この県教委の姿勢や調査について、冒頭に紹介したように、県教組やそれに連なる県議などは「平和教育への攻撃だ」「市町村教委や校長にとって圧力になった」と批判していますが、県教委は「出版元でもない県教組から抗議声明を受ける筋合いはない」(七月三日付「北國新聞」)と、毅然とした姿勢で臨んでいます。
三重の県教組を追い詰めた夏休み帳問題
 夏休み帳をめぐっては、すでに平成十二年三月の三重県議会で取り上げられていて、本会理事で、地元、皇學館大學の新田均助教授が自著『一刀両断―先生、もっと勉強しなさい』(国書刊行会)の中で詳しく紹介しています。

三月二日、鈴鹿市選出の中村敏県議が一般質問で、三重県下の夏休み帳「夏休みの友」の記述に学習指導要領を逸脱した部分があることなどを指摘したそうです。

これに対して中林正彦教育長は、その内容が学習指導要領や昭和四十九年九月の文部省通達「学校における補助教材の適正な取扱いについて」に照らして問題があることを認め、@市町村教育委員会に学校を指導するように要請すること、A発行元である有限会社三重県学校厚生会に内容の是正を申し入れること、を約束したそうです。

因みに、学校における補助教材については昭和三十九年三月にも「学校における補助教材の取扱いなどについて」という初等中等教育局長通達が出ていますが、この昭和四十九年九月三日付で出された初等中等教育局長通達は「最近、補助教材で内容に不適切なものがあるとして父兄等から問題として指摘された」ことに鑑み、都道府県教育委員会宛に出されたものです。 この通達は三点からなっています。要点だけ記します。

一、内容について、教育基本法、学校教育法、学習指導要領の趣旨に従い、「特定の政党や宗派に偏つた思想、題材によつているなど不公正な立場のものでない」こと。
二、事前の届出や承認に関する手続きを励行し、学校や教育委員会はその内容について、使用中のものも十分審査検討を加えること。
三、都道府県教育委員会は、使用状況を的確に把握し、適切な指導助言を行うこと。

夏休み帳などの補助教材の取り扱いをめぐっては最近の国会でも問題とされ、亀井郁夫議員の質問に、遠山敦子文科大臣は次のように答弁しています。

「教育委員会は、教科書以外の教材、学校で使われるものについて、あらかじめ教育委員会に届け出るなり、あるいは承認を受けるなりということになっている。
各学校では校長の判断によって適切な教材を使用できることになっているが、何を使ってもいいということではない。内容が学習指導要領等の趣旨にかなっているもの、児童生徒の発達段階に即したものであること、政治や宗教について不公正な立場のものでないことが求められている。
教育委員会は必要に応じてその内容をチェックし、不適切な教材が使用、採用されないよう指導、助言する責務がある」(平成十三年九月三十日、参議院文教科学委員会)


先の文部省通達や文科大臣の答弁からして、石川県教育委員会の姿勢は通達や答弁に従ったまことに自然な対応といってよいものです。したがって、石川県教職員組合が批判する県教委の「圧力」ではなく、適切な指導・助言の範囲であることが、これで明白になったかと思います。

尚、石川県では、「中学生の学習帳」も昨年の三十校から七校に減っています。

石川県下の公立中学校で「中学生の学習帳」を採用したところは、昨年度は百四校のうち三十校(二八・八%)、今年度は百三校のうち七校(六・八%)ですので、生徒数(約三万四千人)からみますと、昨年の九千九百人から二千三百人となったということになります。小学校の夏休み帳ほどではありませんが、激減といっていいでしょう。

この激減の原因について、問題を報道し続けた「北國新聞」は、長年にわたり「夏休み帳」がほぼ独占状態にあった点に注目し「校長が慣例に流されたり、県教組側に何らかの気遣いをして採用してきたのだとしたら、問題と言わざるを得ない」と指摘し、採用を決定する校長は「子どもたちにとって最も役立つ学習帳は何かを考え、選ぶ義務がある」(七月六日付)と、校長の自覚を求めています。

正鵠を得た指摘ではないでしょうか。つまり、各学校は県教委の適切な指導により、文科省の通達にもとる、内容が学習指導要領などに沿わない補助教材の採用を見送ったというのがその真の理由のようです。
補助教材会社と教職員組合の癒着
 ところで、新田氏はこの夏休み帳問題の背景について、先の本の中で次のような鋭い指摘をしています。

「この宿題帳は、県内の小学校の八四・五%で使用されている。そして、それを編集しているのは『三重県教職員組合』である。三教組の編集ということであれば、売り上げ利益の何割かは、当然、三教組に支払われていることが予想される。しかも、その会社は、登記簿から推測するに、三教組幹部OBの『天下り先』、兼、現役幹部の『バイト先』である」

石川県も三重県も、県の教職員組合が全面的にからんでいます。石川県の「石川県学校用品」も県教組の天下り先となっていたことが明らかとなっていますし、夏休み帳の執筆者も全員、県教組の組合員でした。ですから、補助教材会社と県教組が癒着している構造までそっくりです。

新田理事はやんわりと、そしてシニカルに「他の会社との競争が行われるように配慮していただきたい」と指摘していますが、独占禁止法に抵触しかねないその在り方を剔抉しています。

夏休みに入りましたので、子供たちが持ち帰ってきた夏休み帳の内容を、一度、じっくりチェックしてみてください。学習指導要領に沿わないような問題がある夏休み帳を見つけた方は、ぜひつくる会までご連絡をお願いします。