平成15年9月号(通巻40号)より
日本をめぐる国際環境に変化のきざし
理事・杏林大学客員教授 田久保忠衛
 従軍慰安婦、南京、靖国、教科書と並べてくると「日本怪しからん」の国際的合唱が起きる。声を出しているのは日本の一部左翼、中国、韓国、米国のいわゆるリベラルと称される連中だ。日本の文部科学省は合唱のたび立ち疎んできた。ところが、楽観は禁物だが、国際的な環境は変わりつつある。

 米国のハーバート・ビックス、ジョン・ダワーといった日本学者がひどい著作を書いてピューリッツァー賞を受賞した。この系統の考え方は米民主党のリベラル派に流れている。が、「強い日本」を期待しているいまのブッシュ政権にリベラル派は何の影響ももたなくなった。ただし、米国は政権によって政策の揺れが激しい国だから、民主党政権になると「弱い日本」に封じ込めようとの動きが出ないとも限らない。

 中国共産党中央宣伝部が発行している「時事報告」誌(2003年7月号)に対日政策の転換を唱えてきた人民日報主任記者馬立誠や中国人民大学教授の時殷弘ら4人が座談会を行っているが、びっくりする。「日本の謝罪の歴史は終った」、「まず歴史的な宿怨を超えることが必要だ」と朝日新聞が目を剥く発言が続いている。8月に訪日した中国の李肇星外相は靖国問題を蒸し返したが、調子は従来ほど高くはなかった。

 韓国の盧武鉉大統領は北朝鮮との「同胞」を重視するか、米国との「同盟」を維持するかで進退窮まっている。去る6月に訪日する前にソウルで「韓国の対日強硬発言はいつも日本の強硬派の立場を強めた」と述べ、東京では靖国問題を小泉首相に持ち出さな かった。人気が急落している盧政権の立場は弱まっている。

 油断はできないが、日本の国内でどのような動きが出ているかに中国も韓国も気付か ないはずはない。こういった国際的な空気の変化の中で浮上してくるのは日本の中の反日グループである。局面は変わるかもしれない。