平成16年5月号(通巻44号)より
 
リレー随想
歴史を政治に利用するならば
ノンフィクション作家 クライン孝子
  「歴史がしばしば政治に利用される」のは今に始まったことではない。国家や体制いかんで、都合のいいように捏造されるのは、歴史を少しでもかじった者なら、誰しも周知の事実だからだ。とりわけ、国家間の紛争で戦争が介在すると、結果は歴然としている。「勝てば官軍」。戦勝国にとってはすべて有利に事が運ぶからで、従ってどんな風にでも歴史を書き換えることができるからだ。

 例えば第二次世界大戦にしてもそう。米英との対立軸にあって日独が戦い、負けたとたん、両国の大義は全て「悪」、もしくは「間違っている」とされ、戦勝主要国はむろん、連合国からも小突きまわされ、それまでの自国の歴史は全て否定されてしまった。とりわけ日本のばあいは、白人人種と有色人種との、植民地解放=独立運動における植民地解放グループと阻止グループとの戦いだったこともあり、世界中の白人から袋だたきに遭い、有色人種の一部(主に中国と朝鮮半島)、ですらも白い目で見、自虐史作成に没頭させられたのは、戦後の日本の歴史が証明している通りである。

 日本がこの戦争に参加し、多大な犠牲を払ったことで、少なくとも一五世紀から始まった白人による植民地拡大政策にブレーキを掛けたことは間違いなく、過去半世紀の歴史を振り返ってみると、この第二次世界大戦がきっかけとなってアフリカ大陸、中東地域、アジア大陸一帯で一挙に植民地解放運動が拡がっていったからである。

 中国においてもアヘン戦争に見る英国の卑劣な行為はもとより、世界の列強国がこの国の植民地化に躍起になった。その中国に日本が戦時中、迷惑を掛けたことは事実である。だからこそ、戦後日本は、中国に対しあらゆる形で償ってきている。それなのに、中国は今もなお当時の日本の行為を責め立て、その歴史を政治に利用し日本イジメの手を緩めない。南京の抗日記念館における向井・野田将校の百人斬り冤罪事件見せしめにしてもそう。

 こうなればしかたがない。今後は日本がこうした中国の歪んだ歴史観を正していくために、日本に感謝してくれている東南アジアの国々と結束し、草の根サイドで、まずは中国の人権侵害を糾弾し、声を大にして国際社会に訴え続けていくことであろう。あらゆる機会を利用して!

(くらいん たかこ)
昭和14年、満州生まれ。昭和43年に渡欧、チューリッヒ大学、フランクフルト大学に学ぶ。フランクフルト在住。ドイツ婦人ジャーナリスト連盟会員。主な著書に『拉致!! 拉致被害者を放置した日本 国をあげて取り戻したドイツ』『お人好しの日本人 したたかなドイツ人』『統一ドイツ・その知られざる素顔』他。