平成18年1月号(通巻54号)より
日本の子供たちのために
副会長・ノンフィクション作家・工藤美代子
  なにかおかしいと感じ始めたのは、ここ数年のことである。
 
  かつて、北米に住んでいた私は、よく外国人から、日本の家族制度や教育制度の素晴らしさを賞賛された。とくに日本の子供たちは礼儀正しく、かつ優秀だと、北米の人々が羨むような口調で語っていたのを、はっきりと記憶している。

  私自身も、そうだと信じていた。日本では両親が子供をきちんと躾け、しかもれるような愛情を注いでいる。子供たちは、勉学にいそしみ、世界で最も知的レベルの高い教育を受けている。

  そうした神話をただ、理由もなく信じていた。ところが、ある日気がつくと、日本の新聞やテレビは連日のように悲惨なニュースを報じるようになった。それは親が子供を殺したり、子供が親を殺す事件であったり、あるいは学校の教師が犯罪をおかす場合もあった。

  この国は、いったいどうしてしまったのだろうというのが、率直な感想だった。もはや、自分が知っている日本はなくなってしまった。それは私がほんの二十年ほど日本を留守にしている間に起きた変化だった。

  これをただ、安穏と見てはいられないと思った。社会のなにかが狂い始めている。その一番、顕著なものが、子供の教育ではないかと気づいた。

  それでは自分にできることは何があるのだろうと考えていたときに、「新しい歴史教科書をつくる会」の存在を知った。はなはだ微力な自分だが、それでもできることがあるかもしれないと考えて、運動に参加した。それほど、今の日本の教育の現場は荒廃しており、その結果、被害が子供たちに及んでいると真剣に危惧したからである。

  私は自分のみならず、なるべく多くの女性たちが、これから運動に加わり、発言をしていって欲しいと切に祈っている。