平成18年5月号(通巻56号)より
東京裁判の呪縛
会長代行・弁護士・高池勝彦
  「戦争の犯罪化と個人責任の追及という新しい戦争犯罪理論は、東京裁判でも弁護人側から大いに争われたところであり、裁判所がこれを国際法として定立することができたかどうか疑問であるが、それはとにかくとして、戦争犯罪裁判は軍事行動の一部として行われたものであり、したがって、平和条約に特に規定がなければ戦争犯罪裁判判決は講和と同時に効力を失い、また、連合国は講和後は新たに容疑者を起訴することができないわけである。……その代り、日本は、戦争犯罪裁判判決を受諾し、かつ刑の執行を約束させられている。」
 
  これは、サンフランシスコ講和条約が昭和二十七年の四月二十八日発効した後、同年五月二十五日に毎日新聞社が編集して発行した『対日平和条約』といふ、条約についての一般向のわかりやすい解説書の引用である。今から見てもごく常識的なことが書かれてゐる。公定訳では「連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し」とあるのを、「戦争犯罪裁判判決を受諾し」と判決を加へて解説してゐる。たぶん、この常識は、政府、学者、マスコミ、その他国民皆が当時持つてゐたのである。

  この常識がいつから常識でなくなつたのか。我が国は、サンフランシスコ講和条約によつて、東京裁判を受入れてゐるのであるから、その内容について文句をいへないと主張する者は少くない。
私は、これも自虐的歴史観に由来するものであると考へる。この現状を打破するには教科書を改善して次の世代にかつての常識を伝へるしかない。

  私は、このたび当会の混乱を収拾するため、次回総会まで会長代行を引受けることにしました。会員の皆様の御協力をお願ひします。