平成18年7月号(通巻57号)より
十年目を意義ある年に
会長就任にあたってのご挨拶
    会長・元参議院議員 小林正 こばやし ただし
 


 いろいろの事がありまして、七月二日第九回総会においてご了承いただき、会長に就任致しました。総会での活発な議論を聴き、つくる会の原点は「子どもたちの未来に誇りと希望を!」であることを痛感しました。
 「国民へのアピール」で指摘された子どもたちに広がる「心の闇」の現状にどう立ち向かうか。様々な教育運動の中で、本会が歴史教育の建て直しに着目して、つくる会の運動を立ち上げた先見性は群を抜いており、先輩諸氏に心からの敬意を表したいと思います。また、この趣旨に賛同して各都道府県段階の採択の現場で取り組んで来られた会員の皆さんのご尽力に対して敬意と感謝の気持ちをお伝え
したいと思います。
 先の国会において、中教審の「新しい時代にふさわしい教育基本法」の制定という答申を受けて、政府は「教育基本法全面改正案」を上程し、衆議院に特別委員会を設置して審議が行われました。会員諸氏は既にこの審議経過はご存じのことと思います。政府案の主な問題点は三つありました。一つは「愛国心」の記述です。二つ目は「宗教的情操教育」について、三つ目は「不当な支配」という面妖な記述が残ったという点です。
 この中、「愛国心」については「他国を尊重する」という記述と抱き合わせる形で、「国を愛する態度」として、明文化される案となっています。これでは「つくる会」が描く国家像とは言えません。
 つくる会の設立趣意書は「戦後の歴史教育は、日本人が受けつぐべき文化と伝統を忘れ、日本人の誇りを失わせるものでした。特に近現代史において、日本人は子々孫々まで謝罪し続けることを運命づけられた罪人の如くにあつかわれています」と述べ、この自虐的傾向が、冷戦終結後さらに強まったとしています。
 この自虐的歴史観こそが国に対する誇りを失わせ、自信喪失の底流を社会全般に広げ、子どもたちの「心の闇」の原因ともなっているのです。
 平成十七年度の採択の結果、凡そ五千人の中学生がこの『新しい歴史教科書』を手にして授業を受けています。六月下旬、千葉県の私立中学において、この教科書による神話の授業が行われ、参観させていただきました。我が国の成り立ちは神話のべールに包まれていますが、この頃から百二十五代の天皇に至る我が国の歴史の特色をきちんとした構想で展開されていて深い感銘を受けました。すでに全国の五千人の中学生が、"新しい歴史"を学んでいます。この子どもたちが我が国の歴史の特色について認識を深め、かけがえのない存在としての自分を自覚するとき、我が国は再生の時を迎えるのではないでしょうか。
 総会において承認された十年目の課題は@三年後の採択に向けて、本部執行部・事務局体制を整備し、各都道府県支部との情報交換、連携を強化すること。Aとりわけ本年は採択教科書に基づく教育実践の交流を進め、その研究成果と生徒の感想文を公刊して、次期採択に向けての基盤整備を行うこと等の取り組みを進めます。
 なお、総会においてご指摘のあった「扶桑社」との関係及び執筆者については、執行部として既に当該社の責任者との間で、次期についての基本的な確認を行いました。執行部としては、改訂版『新しい歴史教科書』は完成度が高く、次期改訂については限定的なものに留める方針で臨むこととしています。
 さらに、本年度事業計画として、この教科書を広く国民の皆さんに手に取って読んでいただくよう、市販本の普及と公立図書館、学校への献本などの取り組みも進めて参ります。
 最後に総会に出席された正会員の方から、運営についてのご注文が寄せられました。熱心につくる会の運動に取り組んで来られた立場からの言葉として重く受け止めました。時間的な制約を理由に会員の発言を封ずることは止めなければならないと思います。進行は総会の多数の意思を尊重しつつ、可能な限り多くの方の発言を聞かなければならないと思います。懇親会を理由に発言を封ずる等はあってはならないことです。
 今後とも会員相互の信頼と同志的な結束で本会を運営して参る決意です。