第5回 平成16年6月10日(木) 講 師
  「明治維新」 福地惇
     
明治維新の世界史的意義
教科書調査官更迭問題の当事者
 去る六月十日、東京・牛込箪笥区民ホールにおいて、大正大学教授で元文部省社会科主任教科書調査官の福地惇先生を講師として、「明治維新」をテーマに第五回「歴史教科書10の争点」を開催した。

 福地先生といえば、六年前の「教科書調査官更迭問題」を思い出す人も少なくないだろう。
 
 平成十年九月、福地先生はある月刊誌の座談会で、小学校の社会科教科書を「贖罪のパンフレット」と指摘し、近隣諸国条項を批判された。文部官僚にしては歯切れのよい、歯に衣着せぬ発言に国民の多くが喝采を送った。しかし、それから二ヵ月以上も経た十一月末、共同通信が江沢民来日に照準を合わせて座談会の内容を配信。直後、有馬文相(当時)は福地先生の更迭処分を発表したのだった。

 この不当処分に対して、十二月二十四日、新宿において国民有志が「教科書調査官更迭問題を考える緊急シンポジウム」を開き、本会も協賛している。

 その当事者である福地先生が今回の講師である。本会関係では初お目見えでもあり、出席者は二百五十名を数えた。

明治維新の目的と教科書比較
 やはり、歯切れは抜群だ。テーマは明治維新だが、入り口はGHQの占領政策だった。なぜ戦後歴史教育の特徴である自虐史観が生まれたのか、その原因は東京裁判と講座派歴史観にあったと解析、それが明治維新につながる。戦後の歴史教育では、世界史的視野から明治維新を教える観点が非常に弱いからだと説明、いよいよ話は核心へ。

 なぜ日本は半世紀ほどで欧米列強の仲間入りに成功するという世界史に輝く偉業を成し遂げたのか。それは、国家も国民も、共に独立主権国家の形成を目指していたからだ、と力説される。その目標に向かう出発点として明治維新がある、と位置づけられる。そこで、明治天皇の五箇条御誓文と億兆安撫の宸翰を取り上げ、五箇条御誓文で「新しい国是を誓い」、宸翰で「日本の新しい国家建設の方向性を、勇気あふれる言葉で表明した」と解説される。また、明治維新の目的は、有色人種の地位を向上させることにもあったと喝破された。

  最後に、中学校の歴史教科書を詳しく比較し「扶桑社本のみが講座派史観の軛から脱している」と、専門家としての教科書観を提示して締めくくられた。
(「史」平成16年9月[通巻46号]より)

【来場者アンケートより】
◆先生のお話をお聞きして、幕末から明治維新にかけてであるが、中学校の教科書の読み方を教えていただいたように思う。特に史観の問題は重要だと思う。(70代・男性)
◆文部省調査官にこのような人がいたとは、オドロキ、且つ喜ばしい。しかし、少数派であろう。(70代・男性)