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当会は第四回定期総会において、新会長に田中英道理事を選出するとともに、今後の新たな方針を打ち出した。その一つが「日本文化の再発見・再認識運動」だ。
奈良・京都への「日本文化の故郷”奈良・京都の美を訪ねて”研修旅行」はその実施第一弾として計画されたもので、短期間の準備にもかかわらず二十九名が参加。田中会長自らが解説しつつ案内して二晩にわたって講演、また、西尾幹二名誉会長も講演し、さらに藤岡信勝副会長、八木秀次理事、古賀正、富樫信子両監事も参加する豪華な旅となった。 |
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十月三十一日、研修旅行は田中会長の挨拶からはじまった。
「お早うございます。これから奈良、京都の有名なお寺に参ります。何を今さら案内かと思われるかもしれませんが、私はこの二つの古都を、日本の古都としてではなく、世界の古都として最も密度の高い芸術都市として見ることからはじめます」
絶好の旅日和の中、東京駅集合班の十六名と京都駅集合班の九名が合流、京都駅からバスが走り出すや否や田中会長がマイクを握った。まずは、旅行全体の説明。
「まず法隆寺。聖徳太子創建の寺で、現存する世界最古の木造建築。ギリシャのパルテノン神殿と同様の…」
「宇治の平等院は、建築だけでなく、五十二体の雲中供養菩薩がオーケストラを奏でている」
「京都では三十三間堂。二十八部衆が素晴らしい。中でも堪慶の『婆藪仙人像』『摩和羅女像』はみごとで…」
「これらの仏像の再発見が、古代の日本人の希望と晴朗さ、刻苦に満ちた姿、叱声と励ましを感じさせるはず。その意味でこの旅は、日本人の本当の顔との再会の旅となるだろう」
奈良に着くまでの一時間、田中会長は立ちっぱなしで熱っぽく語りかけた。バスは瞬く間に奈良に着いた。 |
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昼食後、ただちに法隆寺へ。南大門を入り、中門へ歩くにつれ、五重塔が次第に沈んでいく。斑鳩の里の雲ひとつない青空がとても美しい。中門の左右に控える阿吽像を観た後、五重塔へ。その四面には、仏教伝説の有名な場面がまるで芝居の場面のように構成されている。とくに北面、釈迦の涅槃像を囲む弟子たちの悲しんでいる姿が小さな塑像となって置かれている。金網が反射して少し見づらいのが残念だ。金堂で釈迦三尊像、大宝蔵院で百済観音像、夢殿で救世観音像を観ながら、一行はゆっくりと歩を進めた。最高の気分だ。
新薬師寺に到着したのは、夕闇せまる四時三十分。散りかけた萩がひっそりと取り囲む小さな寺が私たちを迎えてくれた。ここは、特別許可でビデオ撮影OK。薬師如来像を囲むように立つ十二神将像の一体一体を、田中会長の説明を聞きながらじっくりと見る。表情がとても豊かなのがよくわかる。
宿泊先の三井ガーデンホテル奈良に到着したのは午後六時、すっかり夜の帳がおりていた。ここで奈良支部の皆さん三名が合流した。休む間もなく講演会。
まず、西尾名誉会長が登壇。前日に訪れた伊勢神宮の式年遷宮のことを紹介しながら、神道の形を伝えてきた文化について西尾節を語る。そして、今日見てきたばかりの法隆寺五重塔の塑像の表情をOHPで大写しにして、表現の豊かさに驚いたこと等を話す。次いで、田中会長。スライドを使って一時間の熱演。神道の人間観も神仏融合の仏像にあらわされているという。時間を忘れて田中節を堪能した。引き続き懇親会。西尾名誉会長も、お酒が入って上機嫌だ。 |
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二日目は、九時前に興福寺着。今日も上天気だ。掃除の最中だったが、北円堂では時間前に入れてくれた。特別拝観の無着・世親像が静かな表情で佇んでいる。どっしりとした重量感の五重塔を過ぎて東金堂に入る。ここでは維摩居士坐像がいい。
外に出ると、修学旅行の女子高校生の一行が来ていた。北海道から来たのだという。かわいいさかりだ。
国宝館では、この女子高校生たちと一緒になった。私たちは田中会長の説明を聞きながら、一体一体を丁寧に見て行く。一時間かかった。一方、女子高校生たちはたったの十分。修学旅行の問題点を目の当たりにした。ここでは、念願の阿修羅像とついに対面。キリッとした良い顔立ちだ。
東大寺には十一時に到着。南大門を入って大仏殿、戒壇院、法華堂と回った。大仏殿は、修学旅行の生徒、観光旅行客で溢れていた。何よりその大きさに圧倒される。戒壇院に回ると、旅行者はすっかり少なくなった。ここでは何よりも四天王立像がお目当て。中でも広目天像がいい。何よりも聖武天皇の立案された東大寺に、広目天のように筆と書物をもって日本を統治ふする思想があったことを田中会長は力説された。三月堂では不空羂索観音像と日光・月光菩薩像が静かに佇んでいた。日本の「古典」とはこのようなものだ。 |
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午後三時、平等院着。池の向こうに鳳凰堂がある。鳳凰が羽を広げたように美しい。宝物は新しく建てられた鳳翔館に移されていた。お目当ての二十六体の雲中供養菩薩像もこちらに移されている。このため、すぐ近くでじっくりと観ることができた。田中会長の説明のとおり、様々な楽器を抱えた菩薩たちが楽しい。千年前のオーケストラだ。
あまりの楽しさに、ここでの研修は自動的に三十分延長。ために、宿泊先の京都ホテル到着は三十分遅れの午後六時となってしまった。
チェックインのあと直ちに田中会長の講演。スライドを使っての講演は時間を過ぎても終わらない。「つくる会」の教科書が日本の原点に立ち返るべきと力説。結局、一時間を越え、一同、そのスタミナと情熱に驚かされ熱心に聞き入った。
最後の夜は、十七階の窓から鴨川を眼下にしながらのバイキング。参加者一人ひとりが感想を述べあい、京都の夜を満喫。 |
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研修三日目も上天気。三日連続で快晴だ。九時にホテルを出発。鴨川に舞う千鳥を見ながら三十三間堂へ。
千一体の金色の千手観音像が鮮やかだ。これを守るように立ち並ぶ二十八部衆。ここでも田中会長が一体ずつ像の前で立ぢ止まって説明。ひとつひとつの像の表情が動いている。婆藪仙人像と摩和羅女像の説明にはとくに力が入っていた。
十時に六波羅密寺着。ここが今同の研修旅行の最終地。開祖・空也の像が目的だ。鐘を叩きながら南無阿弥陀仏と唱えて町を歩いたあの空也の像だ。小さな像だが、表情が力強い。
十二時に京都駅へ。ここで京都駅集合班は解散。東京駅集合班は新幹線で一路東京へ。
次の日、参加した東京支部の松本支部長から次のような感想が届けられていた。
「このたびは田中会長のご解説のもと、奈良、京都に古仏、古像の名作を鑑賞する研修旅行に参加させていただき、ありがとうございました。舞台は量局、季節も天気も最高、そして、西尾先生、藤岡先生にも親しくお話を承りながら歴史の回廊をお供させていただいた…精神の賛沢ここに尽きる、まさに夢のような三日間でありました」 |
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