Vol.05 高橋史朗氏
Vol.07 新田均氏
田中 英道(たなか ひでみち
新しい歴史教科書をつくる会 会長

昭和17(1942)年東京生まれ。現在、東北大学大学院教授。東京大学仏文科、美術史学科卒業。ストラスブール大学でドクトラ(博士号)取得。文学博士。
Vol.06 平成十六年を迎えて―皆様への新年のご挨拶―

 新年あけましておめでとうございます。
 
 いよいよ来年はわれわれの歴史教科書の採択の年ですが、この教科書が、単に中学生のためだけでなく、日本人全体の教科書となる日が間近になってきた、と考えています。

 この前の採択はとても少なかったのですが、それ以後、世の中は変わりました。9・11テロ、拉致問題、イラク問題、ゆとり教育問題、男女共同参画問題、すべて日本人が日本を自分の眼でしっかり見直す必要にせまられています。日本の歴史をどのように見直し、日本がどのような進路をとっていくか、今ほど指針が必要なときはありません。

 歴史は政治・経済に限りません。宗教も文化もすべて共に生きて動いています。日本人が守るべきものは何か、何を創造するべきか、われわれはこの教科書を中心に、戦後五十数年で破壊されてきた日本を再建する中心思想を立ち上げる義務を課せられています。

 ところで共産党機関紙『赤旗』に俵義文・教科書ネット21事務局長が、「教科書の2005年問題」と題して「つくる会の巻き返し許さない世論を」と、大変焦った文章を載せていま す。世の中が変わっているのを知らずに、しきりにわれわれの教科書の採択に反対する世論をつくろう、などと言っています 。『赤旗』がつくる世論など、われわれは恐くはないのですが 、教育界の現場にこの教科書を届けるためには、既成の教科書を使ってはならない、というキャンペーンを一層強く行わなければなりません。

 共産党が「つくる会」以外の東京書籍を含めて既成の教科書批判を一切やらない、ということで理解されるように、それらが戦後五十数年間で作り上げてきたマルクス主義史観の教科書(多少オブラートにつつんでいるが)であることは明らかです 。それが日本人を長らく蝕んできたのです。

 去年半年だけですが、私はベルリン大学に招かれて、(皆さんにはご迷惑をおかけしましたが)、ドイツの歴史観を勉強してきました。明治以後、いかに西欧中心主義の歴史観が、あたかもそれだけが正しい、という顔をして入り込んできたか、よくわかりました。マルクス史観もその中のひとつで、マルクスもベルリン大学で勉強しましたし、未だに大学には彼の言葉が壁に記されています。しかしかつてのマルクス主義の国、東ドイツはもう何もありません。あるのは不幸の中で過ごしてきた人々の大きな負の遺産だけです。

 今、私は「日本の歴史はいかに書かれるべきか」というテー マで本を書いていますが、その中で明治以降、西洋の史観を丸呑みにして、遅れたアジア、という誤った文明史観の中で、日本史が書かれてきたことを批判しています。マルクス主義というドグマがいかに日本の歴史を悪くしたかを分析しています。こうした劣等感から生まれた歴史観を正すだけでなく、いかに現実にある日本に即して書かれるべきか、そのことを考えるために、われわれは英知を集めなければなりません。

 幸い、西尾幹二名誉会長をはじめとして、理事の先生方はその任にふさわしい方ばかりです。今度の中西輝政理事の『国民の文明史』のシンポも、その歴史観の構築にふさわしい題材を提供しています。また藤岡信勝副会長を司会に「歴史教科書10の争点」の連続講座も、そのための格好な議論の場を提供することでしょう。

 まさにこの運動は中学校の歴史教科書だけの問題にとどまるものではないのです。採択に向けて、また全国民に歴史の指針を提示すべく、われわれの努力を今年も結集していきましょう。

平成15年1月5日