「史」から 平成24年7月|新しい歴史教科書をつくる会

fc.png

HOME > 「史」から > 平成24年7月

 天皇皇后両陛下は、国民が苦しい時、悲しい時、大きな困難に絶望した時、常にお心をお寄せになり心の支えとなり生きる元気と希望の光をお与えくださいます。普段は皇室の存在を意識することのなかった人々も、この度の千年に一度ともいわれている東日本大震災を通じて、天皇陛下の為さり様から本来あるべき日本人の心の在り方を考える機会となったはずです。

降り積もる深雪にたえて色かえぬ 松ぞ雄々しき人もかくあれ (昭和21年歌会始)

 戦後初めて再開された歌会始で昭和天皇がお詠みになった御製です。国難を真正面で受け止め、誇り高く潔く懸命に生きる民の姿を厳冬の雪のなかでも青々と凛と立ち続ける松の姿に重ね、雄々しくあれと願われたのです。

 東日本大震災から5日後、天皇陛下が自ら国民に発せられたお言葉は"平成の詔勅"といっても過言ではありません。そのお言葉の一節に、
「この大災害を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさにに深く胸を打たれています」と。昭和天皇の御製と同様に"雄々しさ"という言葉をお使いになっています。外見的な力強さや勇ましさだけではなく、心の強さや気高さも語っていらっしゃるのです。大震災から1年、今度は我々国民が天皇陛下の雄々しき心の在り方に感動しました。

 平成24年3月11日、政府主催の東日本大震災1周年追悼式典に天皇皇后両陛下がご臨席になりました。天皇陛下は冠動脈バイパス手術をお受けになりご退院からわずか一週間。陛下はこの日の追悼行事に出席なさるために大手術を受けられご意志を貫かれたのです。

 当日の天皇陛下は少しお痩せになった印象を受けましたが、いつも異常に凛々しく感じたのは私だけではないはずです。まさに雄々しいお姿を目の当たりにしたのでした。

 先人たちはこれまで、度重なる大震災を叡智を発揮して乗り越え、歴代天皇とともに歴史を歩んできました。互いに助け合い、励まし合い、逞しく生きる雄々しい姿は武士道にも通じています。首相がコロコロ変わっても、国内で大きな混乱や暴動もなく淡々と時が経過しています。

 その根底には決して変わることのない皇室の存在を、私達はごく自然に認識しているのです。大震災のような国難に遭遇した時こそ初めて、皇室を中心に結束するDNAが発揮されるのです。

寛仁親王殿下は常に、私の皇室取材の御意見番でいてくださいました。心より深く感謝申し上げると共に御冥福をお祈り申し上げます。


なお、日本文化チャンネル桜で7月11日放送の「今週のご皇室」で、会報誌「史」が取り上げられました。以下からご覧いただけます。




takashimizu.png


高清水 有子(たかしみず ゆうこ)
皇室ジャーナリスト