各社の教科書を読む公民編 教育出版|新しい歴史教科書をつくる会

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教育出版――全体主義的民主主義を目指す




立憲主義的な民主主義を退ける

教育出版も、東書や清水、日文と同じく、4つの否定的特徴を有する。特に気になるのは、教育出版が立憲主義的民主主義ではなく、全体主義的民主主義を目指していることである。かつて、昭和33年版中学校学習指導要領は、憲法の原則として、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権、三権分立、間接民主制、議院内閣制の六原則を挙げていた。ここには、国民主権という権力集中を伴う民主主義的原則とともに、三権分立、間接民主制、議院内閣制という立憲主義的原則が挙げられていた。すなわち、昭和33年版指導要領は、立憲主義的な民主主義の立場を採っていたのである。

ところが、日教組に牛耳られていた公民教科書は、指導要領を無視するかのように、昭和30年代以来、憲法の原則から三権分立等を全て排除し、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権という三原則説をとるようになった。政治意思の決定という観点から見れば、三原則の中には、国民主権という権力集中の原則しか残っていない。必然的に三原則説から全体主義的傾向が出てくることに注意されたい。
しかも、国民主権とは国民が政治決定を自ら行う意味だと解釈され、直接民主制こそが本来の民主主義のあり方であると説かれ続けてきた。しかし、決して、直接民主制が人気投票に堕して扇動的な政治、時には独裁政治を生み出しやすいこと等々の欠点を指摘することはなかった。こうして、昭和30年代以来、公民教科書は、立憲主義的な民主主義をしりぞけ、全体主義的な民主主義を推奨することになったのである。

この公民教科書の伝統に最も忠実なのが教育出版である。教育出版は、三原則説を明言するとともに、間接民主制の採用理由としては、人数が多いところでは直接民主制は不可能だという点しか挙げない。間接民主制の積極的な意義を何ひとつ語らないのである。


領土をめぐる他人事のような書き方

全体主義的民主主義の特徴に次いで気になるのは、領土をめぐる第三者的な書き方である。例えば、北方領土や竹島について「北海道の東にある歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方領土や、日本海に位置する竹島(島根県)は、歴史的にも国際法の上でも日本固有の領土であるというのが日本政府の立場です。しかし、現在、これらの島々は不法に占拠されています」と述べている。「日本固有の領土であるというのが日本政府の立場です」とは、他人事のような書き方である。

しかし、上記記述はまだ良い方である。不法占拠が明記されており、日本側に理があると読めるからである。これに対して、尖閣については「日本固有の領土であり、領有権の問題は存在しないというのが日本の立場です。しかし、中国は自国の領土であると主張し、対立関係が続いています」と記している。これでは、日本と中国の何れに理があるか分からない書き方である。改訂を望むものである。

しかし、評価できる点も存在する。特に、自由社、帝国書院とともに、警察と国防の両者を公共財の一つとして捉えていることは評価できよう。







平成27年7月31日更新